Google waveには期待していたのだけれど


先日Google wave追悼会が行われたらしい。
昨年5月に発表・公開されてから、一般ユーザーにちょっと公開されたと思ったらあっという間に開発が中止されてしまった(*1)。
俺自身はGoogle waveはベータテストも含め一切使ったことがないので、wave自身がどうこうというのは詳しくは無いのだが、waveにはかなり期待していたところがあるだけに開発の中止はとても残念である。

今現在のインターネットにおける個人対個人のやりとりの主な手段はメールであるが、Google waveにはこの電子メールを置き換えるだけの能力があるのではないかと思っていた。
電子メールはシステムとしてはそれなりにうまく動いているように見えるが、スパムはすごいし、メール1つ1つがセッションレスなのでメールとメールの関連がわかりにくく情報を探し出すのが大変で(*2)、メールを相手が読んだかどうかが分からない(*3)(*4)など、システムとして使いにくい部分も多い。
そろそろ個人対個人のやりとりに用いるためのメールにかわる何らかのシステムが必要なんじゃないかと思っていた。
過去にもメールの置き換えを狙ったソリューションは出てきているが、主に社内ネットワーク向けの有料製品であったりと結局一般に普及することは無かった。
しかも、その社内ネットワークでもそれらソリューションが一般に普及することなく、電子メールが使われている状態である。

なかなか登場・普及しない電子メールの代替えシステムだが、Google waveは電子メールと同じような使い方ができるだけでなく、リアルタイムコミュニケーションやコミュニケーションの履歴を追えること、複数の人間でのやりとりが可視化できること、電子メールに比べて情報の整理がしやすいことなど電子メールの問題を今の時代に即して解決しようとしていたこともあって、将来的に電子メールの代替えシステムになるのではないかと思っていた。
何よりもGoogleという超大手が提言したこととオープン・無料であることもあって、電子メールの代替えシステムを普及させようとする場合の最大の障壁である(と個人的には思う)知名度のなさも全くなかっただけに、少なくとも今までの電子メールの代替えシステムに比べれば圧倒的に代替えになり得るのではなろうかと見ていた。
けれど、現実にはGoogle waveは普及することなくあっという間に終わってしまった。

Google waveの敗因はユーザーが既存のシステムで十分やれていると見なしてしまってしまったからだろう。
プライベートなやりとりなら電子メールとIM、パブリックな議論ならメーリングリスト・掲示板・Wikiなんかで十分足りているし、それらからwaveに乗り換えるだけのモチベーションがユーザにはなく、かつwaveがそれらにはないメリットを提供できていなかったのだろう。

仮にメールが未だにスパムを解決できず、フォルダでメールを整理という旧来の手法でしか整理できなかったとしたら、メールの不便さからGoogle waveへの普及は進んだかもしれない。
しかし、GMailの登場を境にスパムは一般的な問題として取り上げられることはほとんどなくなり(*5)、GMailがメール整理の手法にラベルと検索という新しいやり方を発明・普及させたことにより、メールを探し出すことと整理することはもはや問題ではなくなった。
この意味でwaveにとってGMailが競合したことが、waveにとって最大の障壁だったという見方もできる。
個人的にはGMailが無い世界で、waveが登場していたら電子メールは近い将来無くなることも可能性としては十分にあったのではないかと思う。

エリック・レイモンドが以前、Unixの代替えとして開発されたPlan 9が普及しなかった背景について以下のように述べていた

Plan 9が失敗したのは単に、Unixがそれ以前のシステムを凌駕したほどPlan 9は注目に値する改良ではなかったからである。Plan 9に比べるとUnixはガタピシ言って錆付いたところもあるが、与えられた仕事はちゃんとやっており、現在の位置に留まるだけの資格がある。野心的なシステムアーキテクトへの教訓がここにある。よりよいソリューションにとって最も危険な敵は、すでに存在する十分うまく動作するコードベースである。

Plan 9にとってUnixがそうであったように、waveにとってGMail(や電子メール)はすでに存在する十分うまく動作するシステムだったのだろう。

*1 サービスの停止はまだ先

*2 何度もやりとりしたメールには、引用符が大量についていて読みにくいことも多い

*3 相手がメールを読んだことが分からないことが実用上利点でもある部分も多いが。「そのメール読んでません」は現実世界において相手の言い分をスルーしたい場合の最も有効な言い訳の1つである。

*4 メールの開封確認をする機能もある(RFCで定義済み)が、一般的にはほとんど用いられない。しかも相手が開封したことを確認するメールが飛んでくるだけである。

*5 ほんの2年くらい前まで、IT系のニュースサイトにはベイジアンフィルタの記事や、メール全体のうちスパムがトラフィックの大半を占めるなどといった記事を目にすることが多くなったが、ユーザがスパムを目にしなくなるとこの手の話題を見かけることは激減した。

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